もっともよく知られた、また利用者数の多い奨学金制度として、「日本学生支援機構」(JASSO、旧 日本育英会。育英会の業務を引き継いで平成16年4月に設立された独立行政法人)の奨学金があります。
同奨学金は、第一種(無利息)と第二種(利息付)に分かれており、どちらも返還義務があります。
全大学生の38%にあたる103万人が受給し(2012年度実績)、その内訳は第一種(無利息)が29万人、第二種(利息付)が74万人となっています。
JASSOの奨学金とは(日本学生支援機構[JASSO])
奨学金の制度[貸与型](JASSO)
それぞれ学業成績と(家計の)所得要件の基準が設けられており、双方とも満たすことが必要です。
なにかと物いりな入学時において、10万円単位で50万円を上限に、入学月の基本月額に増額して貸与を受けられる「入学時特別増額貸与奨学金」も用意されています。
申込時には連帯保証人(保証人)が必要となりますが、連帯保証人が見つからない場合は、保証機関に一定の保証料を支払い連帯保証をしてもらう「機関保証制度」が用意されています。
機関保証制度(JASSO)
人的保証制度(JASSO)
なお奨学金の使い道は、授業料以外にも、住居費や教科書代などがあり、比較的間口が広いものとなっています。
とりわけ第二種においては、貸付条件を満たした場合にはほとんど貸付を受けることができるのも、制度利用が多い理由のひとつとなっています。
第二種の金利は年3%が上限となりますが、在学中・返還期限猶予中は無利息となります。
また利率の計算方式は、「固定方式(貸与終了時の決定利率で、返還が終わるまで固定する)」と「利率見直し方式(変換中、おおむね5年ごとに利率を見直す)」があり、申し込む際にどちらかを選択することになります。
利率の算定方法選択制(JASSO)
第一種(無利息)は、かつての育英会の時代とは異なり、学力要件・所得要件に加え審査のハードルが全体的に上がり、現状ではかなり難しくなってきているようです。
その背景には、不況が続くなか奨学金希望者の大幅な増加、そして貸与終了後の返済滞納額の累積的な増加(平成19年度末の延滞額実績は645億円)があるといわれています。
奨学金の申込方法としては、来年度の入学予定者を対象として、入学前に予約する「予約採用」と、入学してから在学校の窓口に申請する「在学採用」、そして家計を支える家族の失職や病気・災害などで緊急時に奨学金を申請する「緊急(応急)採用」の3つがあります。
このうち実際に大半の人が利用するのは、入学後に校内で奨学生の募集が行われる段階で応募する「在学採用」です(ちなみに「予約採用」で不採用となった場合も、入学後に再度「在学採用」の申込ができます)。
よって「在学採用」の場合、奨学金が支給されるかどうかは「入学した後でないとわからない」ため、これが資金計画上よろしくないという場合には、他の手段(国や民間の教育ローンなど)の併用を考える必要もありそうです。
貸与の終了後に返還誓約書を提出し、卒業後6カ月経過してから口座振替による返還が始まります。
返済期間は貸与月額や総返済回数にもよりますが、全額を返済するための年数としておよそ10~20年程度かかります。
したがって、卒業後の返済能力をある程度長いスパンで考えて、月々の返済額を設定する必要があります。
なお、病気・失業などで返還が困難になった場合には、「返還期限の猶予(返還期限猶予制度)」が設けられています。
返還が難しいとき(JASSO)
しかし返済期限の猶予が認められたとしても、いずれは返済を開始すべき時期がやってくることになります。
返還期限を過ぎると、一定額の延滞金が本来の返還金額に加算されるため、万一延滞が長期化した場合には返還すべき総額が大きく膨れ上がり、ますます返済が困難になってしまうリスクを抱えることになります。
日本学生支援機構の奨学金貸出総額はこの10年で2.5倍に膨れ上がっていますが、その一方で長引く経済的不況の影響もあって滞納者数も30万人強へと倍増し、すでに社会問題ともなっています(失職して奨学金を計画通り返済できない。返済猶予の申込はどうしたらよいか。 ご参照)。
長期の延滞者にかかわる同機構の回収業務は、近年その強化がはかられてきています。
これから奨学金を利用しようとする場合は、将来的なリスクをできうる限り織り込んだ、保守的な返済計画をたてて臨む必要があります。
延滞した場合(JASSO)
貸与は専門/専修学校・短大・大学・大学院向けがあります。
高等学校と専修学校(高等課程)に対する奨学金業務は、平成17年度から各都道府県に移管されています。
日本学生支援機構の奨学金は、高等学校、専修学校(高等課程)においては「在学採用」「緊急採用」のみとなります。
また、育英会のときはできなかった海外の大学・短大・大学院への進学・短期留学についても「第二種奨学金」を受けられるようになりました。
貸与条件等については学校(学種)によっても細かく異なるため、詳しくは以下の学種ごとの説明をご覧ください。
申込資格・申込基準(JASSO)