日本学生支援機構の奨学金制度について、その概要を知りたい。でご説明したように、奨学金には返済の必要がない「給付型」と貸付による「貸与型」があります。
日本学生支援機構の奨学金は「貸与型」で、無利子の「第1種」と、利子(年利3%以内)の付く「第2種」にわかれます。
日本学生支援機構の奨学金を利用する学生はすでに134万人(2013年度現在、高専・専修・大学生)、奨学金を利用する大学生(昼間部)の割合は52.5%(2012年度)に達しています。
しかし在学中および大学卒業後もままならず、金利のみならず元本の返済すら滞る方が増加しており、同機構への未返済額は過去最高に達しています。
卒業して社会人となった後、就職等による経済的安定が得られない場合であっても、所定の手続きをとらない限り当然ながら、当初のスケジュールに基づく返済義務が発生することになります。
3ヶ月以上の延滞によって「個人信用情報機関」に登録されますが、これによってクレジットカードが作れなくなったり、将来的な自動車や住宅ローン等の審査にも通らなくなる恐れがあります。
さらに一定期間の滞納が続いた場合は、「支払催促」「強制執行」等により、借入金と利息・延滞金を合わせた「残債務の一括払い」に移行することになります。
貸与型の奨学金制度利用を前提とする対策は限られていますが、それでも絶無というわけではありません。
まず日本学生支援機構の奨学金については「在学猶予」「一般猶予」の返還期限猶予制度があり、これを最初に検討することになるでしょう。
返還期限の猶予(日本学生支援機構)
このうち一般猶予では、最長5年(60ヶ月)を限度とする「返還期限の猶予」を、手続きに従って願い出ることができます(災害・傷病・生活保護受給中・産休・育休中・大学校在学・海外派遣の場合は、5年の制限無し)。
猶予を認められた場合は、猶予期間中に延滞金は課されません。ただし最長5年とはいっても、猶予願いの手続きは1年ごと必要となります。
一般猶予のQ&A(日本学生支援機構)
日本学生支援機構の奨学金以外においては、自分の希望と照らし合わせながら自治体や民間が設置する「給付型」の奨学金を探し出し、その給付条件をクリアすべく最善を尽くすことです。
近年は地方自治体や地域の大学においても、「給付型」奨学金を新たに採用するところが徐々に増えています。
背景には、少子化が進んで学生の増加が見込みにくい中、たとえ目先の収入が多少減ったとしても、優秀な学生を地元に囲い込むことで、自治体の活性化や教育機関としての評価を高める狙いがあるようです。
これらの中には必ずしも奨学金給付ではなく、例えば在学中の授業料の免除・減免等の形を採るところもあるようです。
ただし「成績が一定水準をクリアした優秀者あるいは上位者のみ」を選考条件とすることが多く、覚悟を決めて学業を相当に頑張らなければなりません。
また貸与終了後、たとえば失業や(大学在学期間の失効を伴う)就職の失敗・育児休業による無収入化等において、奨学金の返還猶予を承認する自治体もあるようです。
これらの制度の有無や申請条件等をあらかじめ調べておき、万一の場合にその要件を満たせるかシミュレートした上で申請するのも一法でしょう。
いずれにせよ自分の現状に照らして、定期的な収入が得られない最悪のケースを含め、状況別にシミュレーションを細かく行なった上で、「借入時の金額を最低限に抑える」努力をすることが基本となります。
今日の経済・雇用状勢においては、たとえ定職についたとしても、安定的な返済状況を確保したと言い切れないケースが珍しくありません。
さしたる計画も立てず制度の上限額まで貸与型奨学金を借り入れることだけは、絶対に避けるべきです。
なお2014年4月、日本学生支援機構の奨学金において「奨学金の返還に関わる制度」が、一部変更されています。
延滞金利がこれまでの10%から「5%」に引き下げられ(平成26年4月以降の発生分)、返還期限猶予制度が通算10年(従来は通算5年)に延長されました。
返還に関する制度変更について(平成26年4月から)(日本学生支援機構)
また少し先の話ですが、先ごろ国会で成立したいわゆる「マイナンバー法」による個人情報の正確な把握を前提として、日本学生支援機構の第1種奨学金の返済額を現在の定額返済から大学卒業後の所得に応じて変動させる、「所得連動返済型奨学金制度」の導入(2017年度予定)も検討されています。
奨学金制度の新設や、変更を巡る諸施策についても、その動向には日頃から注意を払っておくことが必要ですね。